音源
外気は春だった。
マフラーを巻いてコートを着て外へ出て、
街を歩く人が薄着なことに気付く。
風は吹いていない。
駅前の雑踏の中マフラーを外すか逡巡する。
レコードを買いに駅前の歩道を渡る。
真剣にお目当てを探す人々、お昼にしてはなかなか盛況だ。
邪魔をしないようにするりとレコードの棚の前に滑り込み
90年代以降7インチのシングルのカテゴリーを1枚1枚素早く探す。
レコード針をプレイヤーにセットする
重りの目盛を回して調整する
33回転か45回転かを選んでレコードに針を落とす
レコードにまつわる動作全てが好きだ。
丁寧で静かだと感じる。
細い駅前の歩道は飲食店がひしめいていて
学生や会社員でいっぱいだ。
左手の楽器店を横目に駅を目指す。
待ち合わせをしてお昼を食べに行く。
立ち止まって空気が春めいていることを肌で感じる。
鞄の中には3枚のレコード、
信号が青になって向かう人並
イヤホンを外した。