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暖冬だと言われた冬も
ようやく冬らしい兆しが見え始めた。
初雪が降って少し経った夜の東京で
旧知の知人と飲み歩く。
そろそろ結婚をするために
重い腰を上げようと思うと
ビールを片手に相談にもならない相談をする。
そうか、それは複雑だな、
あなたはずっと自由で
それが当り前だと思っていた。
出あった頃は
夜も昼も自由だった。
全てが面白く、刺激的で
どんなことも起伏があった。
新しい音、新しい場所、新しい人、
レコードに針を落とす休日の朝、
あの頃の空気が今を培ったのだ。
安全パイに走ろうとし
なんだかがんじがらめみたいだ。
先々の事ばかり心配し
中身の濃度が薄くなっている。
なんとつまらんことなのだろう。
そして
きみはずっと自由だった、と証言してくれる人がいるのは
救いだと思った。