25
仕事を早く上がり、みんなに短いあいさつをし
電車へ飛び乗った。
25年振りに会いに行く。
小さい頃、毎年クリスマスプレゼントをもらっていた。
きりっとされていて美しく、静かな雰囲気をたたえた人だった。
ていねいな字で書かれた手紙を子ども心に美しい字だと思った。
突然の連絡は寝起きの頭に一瞬理解ができず
仕事を早く上がる算段をして斎場の名前を確認する。
父は毎日帰りが遅く
小さい子どもと四六時中家の中で一緒だった母はどれだけ大変だったか
想像がつかない。
そんな時近所だった彼女が手をさしのべてくれた。
母にとっては救いだったに違いない。
忙しい時彼女の家へ子どもを預け、そして彼女はよく遊んでくれた。
お人形遊びやおままごと、見守ってくれていたのを覚えている。
決して大きい声を出さず静かに傍にいてくれた。
離れた場所に住むようになってから
なかなか会えずにいたけれど
久し振りに見た顔はまったく変わっていなかった。
品が良くとても美しい。
ごはんを食べながら思い出話をしていたら
お店のお姉さんも最近身内との別れがあり
周りの人に
ちゃんと傍にいて見守ってくれているから
大丈夫だよと言われたらしい。
常套句みたいに「見守ってくれているから大丈夫だよ」と
自分自身なんでもなく言っていたけれど
お姉さんの言葉には心からの思いやりがあり
その優しさに感謝をした。