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日々と生活

1,189.8

私は目に見える美しいものを信じるのよ。

それを疑うようになったらおしまいよ。

 

311の1週間前

日本全国から集まって新人研修があった。

一緒に飲みましょうと声を掛けてくれたのは九州のチームだった。

それから5年、熊本で地震があって

思い出したことがある。

 

いつでも会えると思っていた。

大人になって移動に飛行機という選択肢が加わって

かんたんに飛べるような気分になっている。

 

だけども

実際に飛ぼうとしたら、休みを取り前後に予定を入れず

仕事を片付け引き継ぎをしてという段取りを踏む。

 

そうこうしている内に

1年で行ける場所は数が限られる。

 

じゃあ、とりあえず置いといて

会いたい人はだれ。

 

思い出した、そして想像する。

友人が捧げてくれたFairground AttractionのPerfectを思い出す。

Life is too short

その一文が耳に止まる。

 

だれ、何をしたい。

かんたんな事実。

 

022610

10年前の2月26日にイベントを立ち上げた。

10年って。

 

学生の時の10年ってものすごく長い時間で

中学校高校大学でやっとこ10年だ。

その時の10年間、ずっと一緒にいた人は何人くらいいるだろう。

 

働き出してからの10年

もう思い出せない位色んな人と色んな出来事があった。

思い出したくないことも何度も思い出したいこともある。

 

オールナイトのイベントの後の眠る時間が長くなり

土日のいずれかは予定を入れずに家で休むようになり

意識はしなくてもそうやって休憩をする時間は増えている。

 

10年前の夜は今でも手に取るように思い出すことができる。

それははっきり何度でも思い出したい夜だ。

色鮮やかでキラキラした粉が夜明けまで降り注いでいるような

呼吸するのさえも楽しさで苦しくなるような夜だった。

 

10年前に初対面でイベントで隣り合わせたお客さん同士が

ずっと繋がっていて気軽に遊ぶ友達になっているなんて

誰が想像できただろう。

その中の何組かは結婚をし、生活をはぐくんでいる。

 

あなた達はずっと素敵で

出会ってから今までを四六時中知っている訳ではないけれど

変わっていないよ。

 

そのままでいて。

くだらないなんて言わないで、恋愛を繰り返して

お酒の失敗を笑い話にして、それでももう1杯飲んじゃうような

どうしようもなくても愛さずにはいられない

ずっとそのままでいて。

 

そんなことを考えながら、渾身の一曲をかけた。

 

 

33

暖冬だと言われた冬も

ようやく冬らしい兆しが見え始めた。

初雪が降って少し経った夜の東京で

旧知の知人と飲み歩く。

 

そろそろ結婚をするために

重い腰を上げようと思うと

ビールを片手に相談にもならない相談をする。

そうか、それは複雑だな、

あなたはずっと自由で

それが当り前だと思っていた。

 

出あった頃は

夜も昼も自由だった。

全てが面白く、刺激的で

どんなことも起伏があった。

新しい音、新しい場所、新しい人、

レコードに針を落とす休日の朝、

あの頃の空気が今を培ったのだ。

 

安全パイに走ろうとし

なんだかがんじがらめみたいだ。

先々の事ばかり心配し

中身の濃度が薄くなっている。

 

なんとつまらんことなのだろう。

そして

きみはずっと自由だった、と証言してくれる人がいるのは

救いだと思った。

 

 

 

 

109

今ね、旅の計画を練っている。

夜に薄いコーヒーを飲みながら、LCCの飛行機を調べている。

 

行きたい所はいっぱいあるけれど

時間とお金と円陣を組んで相談しながら

どの飛行機に乗るか、どうやって移動するかを決めている。

 

本当はアメリカに1週間なんて行きたいけれど

今年は近距離で、それでもわくわくしている。

 

いつだって身軽に旅に出たい。

そして大好きな仕事に戻りたい。

 

LCCが導入されてから日本の旅事情も一気に変わった。

片道1万円以下で海外へ行けるのだ。

国内だったら高速バスより安いかもしれない。

 

ツールが増えた分、練って練って練って

そこにいる時間を大事にしたい。

 

旅は必要なもの、そして原点に帰るもの。

今年は幸いなことに青森、福岡と行く事ができた。

マイルストーンを置くことができ

日々に幸せを感じる毎日だった。

 

行きたい所へ、のびのびと。

今年も来年も、楽しんでいらっしゃい。

567mile

福岡でとても素敵な男性に会った。

友人のパーティーで知り合い、初対面だったにも関わらず

深夜のラーメンに付き合ってくれ、帰り道近くの公園を散歩した。

 

2回目に会ったのは東京だった。

用事があるので北関東へ来る際、東京を経由するというので

お昼ごはんを一緒に食べた。

福岡で会った印象と変わらず、礼儀正しく食事の食べ方がスマートだった。

 

3回目に会ったのは再び福岡で

野外フェスを観に行った夏休み、福岡の街中を案内してくれた。

何回も福岡へは行っているのに初めての場所ばかりで

高台から見下ろす博多の町は言葉にならない位綺麗だった。

 

いうなれば普通の人だ。

10年前だったらその美しさの尊さに気付かなかったかもしれない。

福岡を愛し、夜は遊びに出掛け、地元の会社に勤め、

好きな食べ物を伝えるとおすすめのお店へ連れて行ってくれ

遠くから来たからと時間を気にせず名所へ案内をしてくれる。

食事をしていると食べ終わるペースをさりげなく合わせてくれて

自分の話ばかりにならないように適度に質問をしてくれる。

さらさらとよく食べ、よく笑う。

ただ、その「普通」ということが

どれだけ稀有な存在か、今ならよくわかる。

 

人を大切にする、という基本的な姿勢が

親御さんが彼をきちんと大切に育ててこられた感じがよく出ていて

うかつに賛辞を述べることができなかった。

 

美しい、素敵だ、格好いい、

そういう言葉では表せない「人としての正しさ」は圧倒的で

褒め言葉を口に出すのすらおこがましい気がした。

 

1069キロを経て戻ってきた今も

あんなに素直で真っすぐ育った人と結婚できる女性は

幸せだなと感じている。

 

その土地で生まれその土地で人生を過ごす人生。

そしてそれを疑わない人生。

あんなふうに生きることができたら、と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

33718

祖母はお花の先生だった。

日々はだんだん、曜日や時間の観念がなくなり

誰かの手助けが必要になってくるけれど

昔覚えた手仕事は忘れない。

 

彼女は学生の頃はお裁縫があまり好きではなかった。

近所に洋服のリペアをしているお宅があって

そこへ洋服を預けに行った時、作業をじっと見ているうちに

自分もやりたくなったと言う。

 

そこで子どもが大きくなった時、お裁縫を習う事にした。

ウェディングドレスを手縫いで縫おうと思って

日々こつこつと作業を進めた。

 

彼女の手はそれから様々な物を生み出した。

洋服の型紙はデパートの包装紙の裏に手書きで引いて、

ジャケットやブラウス、スカートやワンピース

何着もの洋服を作った。

その時までひっそりと大事にされてきたセンスが

洋服という手段を通して表に出てきたのだった。

 

お花も、お茶も、洋服も、そして日々の何でもない作業ひとつ、

彼女はとても静かにあっという間にこなすのだった。

 

そして今

手仕事の多くはこなすことが難しくなったけれど

お花を持って行くといきいきとして

これはなんの種類かしら、これはダリアね、

花瓶に生けてからバランスを見るといいわよ、

さりげないけれど確かな感性が出てくる。

 

その1本はもう少し短く切るといいと思いますよ、

言葉は押しつけがましくなく、あくまでもアドバイスだ。

長年大切に使われてきた花切り鋏を

引き出しから大切に出し手渡す。

 

一人の母として子どもを育て上げ、両親を見送り、

彼女はずっとしゃんとしてきた。

時々出る冗談には知性が感じられ、みんな笑顔になった。

 

年を取るということは

必然的にできない事が増えていく。

膝が痛くなり、長時間出掛けるのがつらくなり、行けない範囲が広くなる。

 

介護の勉強をしていた時思ったのは、

できなくなる事を数えるのではなく、その人にとって何が楽しいことか、

何が興味があるのかを考える方がお互いにずっと良いという事だった。

 

あれができない、これができなくなる、

遅い早いはあるけれど、人はみんな失っていく。

それならば何に感情を動かされるか、何なら大切に思えるかを

一緒に探した方が明るい。

 

祖父が亡くなった月に思う。